研究所統合のこと

先日「ホンダ四輪も本社で開発へ、子会社・技術研から統合」との記事が掲載された(朝日新聞、2020年2月17日)。驚いた。当時の本田宗一郎さんが技術研究所を 作ったのだと思っていたのだが、ある方のお話では、藤澤専務が宗一郎さんの居場所がないので研究所を作り、そこで好きなようにやらせるためだったとか。当時、研究所を別組織にするのは一般的ではなく、そうすることが 技術力向上には不可欠と説いたと記憶している。その後、数々の新しい技術を実用化し 市販車に取り入れられ進歩してきたのは周知のこと。

海外の知人に「Bad news」とメールしたら、「Why?」との返事。今回の統合は、二輪で実績をあげたから四輪でもということなのか。効率的に、スピーディーに仕事を進める上ではいい組織かも知れない。軽はトップクラスの販売実績をあげ続けているが、 会社の業績は悪い。大英断と言うべきか何だか、加速度的にらしさを失うホンダは どうなるのだろう。

NC1のこと

New Sports car eXperimental

Xとは何だったのか?


NSXが登場した時、New sports car experimentalという言葉を知り、NSXに込められた意味をよく理解していた。X、すなわち未知数を、果たして如何に進化し発展させて行くのか、大変関心を持って乗り続けた。幸いにも、新しい改良が加えられる度に「試乗会」と称して、サーキットや研究所のテストコースの一部などを利用して乗る機会を得た。その度に、外観は変わっていないのに、その走りは明らかに進化していることを感じ、常に新鮮であった。

Type-R、Type-T、C32Bエンジン、Type-S、Type-S Zero、Type-R(02)どれも登場する度に進化を感じる瞬間だった。このことがオーナーとして喜びでもあった。ホンダらしさを感じた。そして、NSXはNC1で大きな変化を見せてくれた。それは「別物」という言葉で表現するオーナーもいるほどであった。その変化の中身は有り余るほど多い。まずハイブリッド化、そしてツインターボ搭載縦置きエンジン、 アルミから新素材へ、 AT化、 SPORT HYBRID SH-AWD ・・・。Xの意味を理解しているつもりの私でも、あまりの変わりように戸惑いとも言えるほどの驚きであった。

さて、ドライブしてどう感じたのか? 実はこれまで進化した時とは異なり、これほどの大きな進化を遂げたにも関わらず、NA1オーナーに対して試乗の機会を与えられるのはかなり時間が過ぎてからのことだった。それ以前に、新型が出る、出ると言いながら延期、延期で、市販車を目にするまで如何に時間、いや年数が経過したことか。ま、それはさておき、まずやはり大きい。いや、大き過ぎる。サイズについては仲間と話していても結構個人差があるようで、ある人は「そうでもない、いいくらい」と言う。ただ、実際に自宅の駐車場や街の一時預かりのスペースを考えると現実的なサイズとは言えない。それよりも、自身が運転席に乗って街を走っている時、やはり大きいとの感覚が常にある。街乗りでは十分過ぎるパワー、よく効くブレーキのおかけで追い越しもラクラク。ただ、街乗りでそれほどまでのパワーが必要なのか? あいにくサーキットをそれなりのスピードで走った経験はないが、必要だと思わせるのだろうか。

そして重い。クリアしなければならない安全基準があったとしても、1800Kgである。C30AエンジンのNA1は1350Kgである。その後のType-Rは1230Kgで、最終モデルと言ってもいいC32Bエンジンを搭載したあのType-R(02)に至っても1270Kgと軽量である。10年以上を経て、この車はより高い性能を得たが重量は変わらない。これこそが進化だと思う。このことはオーナーがこの車から長きに渡り離れることができなかった大きな理由のひとつであろう。なぜこんなにも重い車ができたのか、いやなぜこんなにも軽い車を作ることができたのか? それは、日本国内にあった280馬力規制のおかげだと強く信じている。限られた条件の中でいかに運動性能を上げるかを必死に考えた成果なのだろう。

いまひとつは価格。高過ぎると思う。以前、NA1を発売して数年後のホンダ社内での会議で価格について「もっと高くても良かったのでは?」との話題になった時、当時の開発責任者であった上原は「良かったと思っている。高額だけど、欲しいと思ったらサラリーマンでも買える価格だったから、この販売実績になっている」と話されたとか。ポルシェやフェラーリよりNA1が欲しいと思って買った人は多いと思うが、ランボルギーニを止めてNC1を注文した人はどのくらいいるのだろう。

本田技研工業株式会社のNSXのページ